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ポジティブ心理学とわたし

前回のブログ『わたしの手芸歴』に書いた通り、わたしは幼い頃から手芸が大好きでした。

でも正直に言うと、作る事は大好きなんですができあがったものにはあまり興味がなく、家族にあげようとするのですがそれも頻繁だと疎ましがられて、結局はしまいこんでほったらかしになったものがたくさんあります。

マクラメ以外はまともに教わったことはなくほとんど自己流で、手芸歴が長い割にたいして上達はしませんでしたから、人にもらってもらえないのはしょうがないとしても、結局あまり活用しないのを分かっていながら作るのが止められなかったのは単純に楽しかったからだと思います。

さすがに今は、生徒様にマクラメの魅力をお伝えするためにも、自分で作ったアクセサリーの着け心地を試すためにも、毎日マクラメのアクセサリーを身に着けていますが、作ることが楽しい、という気持ちがモチベーションになっていることには変わりありません。

 

 

特に、この手芸の楽しさが私にとっての救いになったのは、母が亡くなった後と、自分が病気になった後と、双子育児が辛かった頃です。

母が亡くなった後の言い知れない悲しさ・寂しさも、父のカーディガンを編んでいる間だけはすっかり忘れていたと思います。

自分が病気になって退院した後、ほとんど引きこもりのような生活をしている自分のみじめさ・不甲斐なさも、レース編みをしている時間には気にしないで済みました。

双子育児で毎日殺気立っていた時も、子どもたちの人形を縫ったり、子どもたち用にマフラーや帽子を編んでいる時には疲れさえ感じないでいられました。

今考えると、これらはすべてフロー状態の効能だったのだと思います。

 

 

マクラメを本格的に始めた頃は母の死や自分の病気は受け入れ、育児もひと段落ついて、生活そのものは落ち着いていましたが、マクラメを一心に結んでいる時の没入感は日常的に感じる楽しさや充実感とは比べ物にならないくらいで、「この感覚はいったいなんなんだろう!」と新鮮な驚きを感じました。

そこで、この感覚について知りたい、と思ったところからフローについて知ることになり、フロー理論と関連が深いポジティブ心理学についても学ぶきっかけとなったわけです。

 

 

ポジティブ心理学は、精神病理や障害に焦点を絞るのではなく、楽観主義やポジティブな人間の機能を強調する心理学の取り組み、と定義されています。

普段の心の状態を0とするなら、心の病気の状態はマイナスの状態と言えます。その重く沈んでしまった心を0に近づけるためにどうしたらよいか、という研究が今までの心理学・精神医学研究中心でした。そのおかげでたくさんの発見や功績があり、多くの人が救われるようになりました。私も心を病んでその恩恵を受けた一人です。

ですが、マイナスの状態を経験する前に、0が1や2だったらどうでしょう。もしかしたらマイナスの心の状態を経験せずに済むかもしれません。つまり、ポジティブ心理学は精神疾患を予防できるような人間の強さに注目して、それを理解し、伸ばすための心理学だと言えると思います。

 

 

 

ポジティブ心理学は、理論や実験に基づいた科学的な手法によって研究されている分野です。科学は完璧ではないかもしれませんが、根拠のあいまいな個人の経験談よりはるかに現実的に、私たちの力になってくれるものだと思います。

私は心理学者・精神科医・カウンセラーではありませんが、元保健師として病気の予防や健康促進には強い関心があります。

世界中の名だたる研究者が私たちに分かるように伝えてくれる本を読むことで、ポジティブ心理学のエッセンスを学び、それをレッスンの内容にも反映させて、生徒様により深い喜びを味わって頂ける教室にしたいと考えています。そして微力ながらも生徒様のウェルビーイングに貢献できればと願ってやみません。

 

 

・ポジティブ心理学については心理学博士でペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授のTED講演が、とても分かりやすいのでお勧めです→こちら

 

 

 

 ・フロー理論についてのシカゴ大学の心理学博士ミハイ・チクセントミハイ教授のTED講演もあります。→こちら

 

 

 

参考文献:『ポジティブ心理学ー21世紀の心理学の可能性』島井哲志編/ナカニシヤ出版 『世界でひとつだけの幸せーポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』マーティン・セリグマン著小林裕子訳/アスペクト